日本環境ジャーナリストの会は、中国と韓国から地域に基盤を置いて活動している環境保護NGOの実践者とそれらを報道する環境ジャーナリストを招き、10月24、25日森林塾青水の9年間に及ぶ活動フィールド、群馬県みなかみ町藤原で交流シンポジウムと茅刈りなどフィールド活動への参加を試みます。森林塾青水地元住民と協力して、首都圏の水源地域で現代版の入会の構築をとおし、山村の暮らしと多様な生物の生息域の維持、復活、伝統文化の継承とを目指しています
地元の農林業従事者、みなかみ町の役場、さらに日、中、韓のNGO、環境ジャーナリストが、東京にベースをおく日本環境ジャーナリストの会の会員、青水塾の塾生、環境日本学の創成を目指す早稲田環境塾の塾生と合流し、現場を踏査しながら日本、中国、韓国ともに厳しい状況にある農村地域社会をどのような手法で維持し、ひいては生物多様性を維持、持続可能な生物圏を維持することができるかを実践の現場から考えます。
さらに社会の関心を高めるために、その報道のあり方とを合わせて実地に検証、検討しようとするプロジェクトです。
山村の現場から持続可能な人と自然のあり方を考えようという前例のない新鮮な試みです。
市民、ジャーナリスト、産業、行政に携わっている方々の参加、取材を歓迎します。
環境ジャーナリストの会と森林塾青水は、いずれも環境保全機構・地球環境基金から助成を受け、日本環境ジャーナリストの会は「生物多様性とジャーナリズムの報道手法に関する日中韓セミナー」、森林塾青水は「多面的価値のある草原を持続的に保全できる仕組みを構築」の、いずれも社会構造的な観点から、生物多様性の維持を目的とするプロジェクトを進めてきました。交流シンポジウムは、社会の多彩なセクターからの参加を得て行われている協働プロジェクトです。多くの方々の取材、報道、参加の機会となることを願っています。
なぜ、今、山村での日・中・韓交流セミナーなのか
世界計量経済学会長を勤めた宇沢弘文氏は、農村を社会的共通資本として位置づけ、一つの国が単に経済的な観点だけでなく社会的、文化的な観点からも安定的な発展を遂げるためには、農村の規模がある程度安定的な水準に維持されることが不可欠であると主張しています。しかし資本主義的な経済制度の下では、工業と農業の間の生産性格差は大きく、市場的な効率性を基準として資源配分がなされるとすれば、農村の規模は年々縮小せざるを得ないのが現状です。更に、国際的な観点から市場原理が適用されることになるとすれば、経済は工業部門に特化して、農業の比率は極端に低く、農村は事実上、消滅するという結果になりかねない、と宇沢氏は指摘しています。
農業は国民の食糧安全保障に関連した基幹産業であり、農村産業による雇用の創出、環境保全、文化としての景観維持などの社会的な機能を担います。
農業は自由貿易の発展により切り捨てられるべき比較劣位の産業ではありません。
交流シンポジウムは、2010年に名古屋で開催される、生物多様性条約加盟国よる第10回会議(COP10)に先行する取り組みです。政府間会議のCOP3が「企業にとって有用な生物」を、国際自然保護組織が「絶滅に瀕した貴重な生物」の保護を主な対象とするのに対し、このシンポジウムでは人間の暮らしの場、半自然生態系での人と生きものの持続可能なあり方を、その実践の現場から実践者とともに考え、文化としての環境の視点からCOP10への市民社会からの提言を試みます。
【10月23日(金)】
9:30−17:30 場所:早稲田大学アジア太平洋センター(19号館)309号室
日曜日の発表者が全員集合:発表内容の確認を、通訳を入れて実施
JFEJからは以下の理事が参加いたします:
田中泰義、山崎和雄、村田佳壽子、水口哲、芦崎治、屋木伸司、佐藤淳、高田功
【10月24日(土)】 茅刈り 住民との交流
13時から群馬県みなかみ町藤原上ノ原の元入会地の茅場で、茅の刈り取りに参加。
【10月25日(日)】日・中・韓 環境NGO・ジャーナリスト交流の集い
場所:群馬県みなかみ町藤原「ツインビラ宝台樹」
《シンポジウムのタイムテーブル》
清水英毅(森林塾青水塾長) 13:30〜13:40
みなかみ町副町長
「なぜ、今、藤原での日・中・韓交流セミナーなのか」 原剛 (毎日新聞客員編集員・早稲田環境塾塾長) 13:40〜14:00
14:00〜15:00
中国
・ケ 儀 (貴州省「草海農民環境保護協会」の創設者)
・史 立紅 (自然保護市民組織「緑色高原」の創設者)
韓国
・呂 鎮九 (韓国生態保存市民の会代表)
・朴 重R (朝鮮日報社会部次長)
司会 村田佳壽子 (日本環境ジャーナリストの会副会長)
15;00〜15:50
「草原を核とした豊かな里づくり―多様な人と生き物が集う新田園空間」 笹岡達男 (全国草原再生ネットワーク理事)
中国と韓国からの参加者2名からのコメント
司会 水口 哲 (日本環境ジャーナリストの会理事・シンポジウム実行委員長)
15:50〜16:50
・朴 重R (朝鮮日報社会部記者)
・史 立紀 (チャイナ・デイリー紙元社会部記者・映像ジャーナリスト)
・原 剛
司会 山崎和雄 (日本環境ジャーナリストの会前会長)
16:50〜17:00
田中泰義 (日本環境ジャーナリストの会会長)
◆中国
ケ 儀
北京三生環境可続発展研究所研究員
中国初の農民環境NGOである貴州省「草海農民環境保護協会」の創設者。企業100社の基金拠出による、内モンゴル阿拉善(アラシャン)乾燥地帯での定着農業プロジェクトのリーダー。現在は、北京大学内に設置されている北京三生環境可持続発展研究院研究員
史 立紅
「野生中国」代表
英字紙チャイナ・デイリー紙記者出身。世界自然基金会中国プロジェクト部の元連絡主任。雲南省のチベット族自治区で2000年に自然保護市民組織「緑高原」を創設、パンダと並ぶ保護動物「金糸猴」(キンシコウ)が生息する森の保護と住民の暮らしの両立を図ることに成功。現在は北京で映像ジャーナリスト。怒江の上流に計画されている13の大規模ダムに反対する住民と連携、制作したドキュメンタリー『怒江の声』(2005年山形国際ドキュメンタリー映画祭上映作品)は、NHKテレビでも紹介された。
◆韓国
呂 鎮九 (YEO JIN GU)
韓国生態保存市民の会代表
環境保護活動が盛んな韓国で、様々な環境で自然と人間の共生を図っている市民運動の指導者。韓国環境教育ネットワーク、ソウル市環境教科書審議委員。ソウル湿地研究報告書、ソウル河川生態報告書を執筆。
朴 重R (PARK JUNG HYUN)
朝鮮日報 社会部次長
韓国最大の発行部数を有する朝鮮日報の社会部記者。韓国の環境報道をリードし、国連環境計画の「グローバル500賞」を受賞した朝鮮日報社の環境問題担当記者。市民運動との接点で環境報道を展開している。
◆日本
笹岡達男
森林塾青水顧問
環境庁の阿蘇、上信越高原国立公園レンジャー、環境省自然環境局国立公園課長を経て2007年、休暇村協会常務理事。全国草原再生ネットワーク理事。
原 剛
早稲田環境塾塾長 早稲田大学特命教授、名誉教授
毎日新聞社会部記者、論説委員を半世紀務める。森林塾青水顧問。日本自然保護協会理事、全国環境保全型農業推進会議委員。
(敬称略)